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引田ひなまつり

香川県の端にある東かがわ市引田。このまちでは、女児が生まれたら豪華なひな飾りをこしらえ、近所の人にお披露目する文化があった。その名残で地域の古い家には立派なひな飾りがあり、2003年から地域住民によって「引田ひな祭り」が毎年開催されている。このお祭りでは、地域独自の引田飾りと呼ばれる豪華な雛人形が古い町並みの軒先に飾られる。今回のプロジェクトは、この祭りに参加させてもらうことから始まった。

地域にまつわるエトセトラ

この地域は、駆け落ち坊主が広めた手袋産業(諸説あり)、伝統的な製法を続けている醤油や和三盆、ハマチ養殖の発祥地、江戸時代から残る町並みなどなど、いろんな顔を持っている。それだけ聞くとすごいマルチタレントで魅力的だが、そんなまちにも少子高齢化の波が押し寄せている。所狭しと立ち並ぶ建物の中身は空っぽで、いや、それならまだマシで、大量の残置物が散乱しているところや、崩れかけの建物もある。

形骸化した文化をフレームに地域の実情を飾る

そんな地域の実情を表す場を、住民たち自ら築いた多くの人が集まる機会につくりたいと思った。

引田ひなまつりは、みんなが持っている雛飾りを使ったまちづくりとして初められたらしく、女の子の健やかな成長と幸せを願うという本来の意味での雛祭りとは違っている。形骸化した晴れ(ハレ)の日の文化をフレームに日常のリアルな褻(ケ)の文化を飾ってみよう。

それで考えたのが、地域の人から赤いものを借り集めて雛壇をつくる、というやり方だった。雛壇の赤は、魔除けを意味するらしいが、そんなちゃんとした意味がない赤いものはたくさんある。「赤いから」っていう理由だけでいろんな物事をくっつけて、地域の良いところも悪いとこもごちゃ混ぜになった塊をつくってみる。

「赤いもの貸してください」

地域の人たちに「赤いもの貸してください」と声をかけまわった。これまで話したことない人にも、これが話しかけるきっかけになった。個人のお宅を尋ねたり、企業に連絡したり、空き家の所有者にかけあったり。最終的には、引田の住人の持ち物や空き家の残置物、東かがわ市の企業などから約40箇所、400点の赤いものを借りることができた。

「褻飾り」とは

当日は貸してくれた赤いものの思い出話から会話が生まれた。会話の中で、「レトロやなぁ」「懐かしいなぁ」と言う人が多かったが、今思うと、それはこの地域の世代交代がなされていないことを示していたかもしれない。

誰しも1個くらい赤いものを持っている。でも、ほとんどの人が「赤いもんなんかない」って言う。家に帰って確かめてもらうとやっぱりある。日常に身を潜めていた赤から発された色んな言葉が新たに物語をつくる、そんな褻でできたら雛飾りを「褻飾り」と呼ぶことにする。

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その他の参加者

外村理穂(香川大学創造工学部 B2)
小西和花(香川大学創造工学部 B2)